雇用形態は、働き方や労働条件に大きな影響を与える要素です。本コラムでは再就職を目指す皆さんに向けて5種類の雇用形態のメリット・デメリットを解説します。このコラムを通じて皆さんが自分自身に最適な雇用形態を見つけ、充実した職業人生を送るための参考となりましたら幸いです。
まずはじめに厚生労働省のHPでは、「正社員」「契約社員」「派遣労働者」「フリーランス」「パートタイム労働者」「家内労働者」「短時間正社員」「自営型テレワーカー」の8種類の雇用形態が定義されています。(参考ページ:厚生労働省HP)
各雇用形態にはそれぞれに特徴があり、人によってはそれがメリット・デメリットとなることもあります。選択する雇用形態によって、収入の安定性、労働時間、福利厚生、成長の機会、仕事に対する長期的な満足度などが変わってくるため再就職を考える上で重要なポイントとなります。次の章では5種類の雇用形態についてその特徴を解説します。
正社員とは1.労働契約の期間の定めがない2.所定労働時間がフルタイム3.直接雇用、のいずれの要素も満たす労働者のことを言います。
→メリット
・毎月の安定した収入
正社員としての雇用形態は収入の安定性が最大の特徴です。正社員は通常月給制で働き毎月の収入が一定のため、月々の生活費や将来の計画(住宅購入、教育資金等)を立てやすくなります。
・社会保障(福利厚生)の充実
充実した社会保険の保障も正社員の特徴です。正社員は、健康保険や厚生年金、失業保険、労災保険などの社会保険に加入することが義務付けられており、これによりさまざまなリスクから守られます。
・キャリアアップの機会
他の雇用形態に比べてキャリアアップの機会が比較的多いです。具体的には昇給の機会、専門性の向上(研修や教育の機会)、ネットワーク構築(人脈形成)の機会等が得られます。
→デメリット
就業先によっては長時間労働の可能性があり、ワークライフバランスの崩壊や精神的なストレス、燃え尽き症候群など健康への悪影響を引き起こす可能性があります。
契約社員は正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められており、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了する雇用形態です。1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年です。
→メリット
・比較的時給が高い
通常の正社員よりも高い時給が設定されることが多く、また特定のプロジェクトに特化しての有期での雇用契約となるケースが多いです。これは「短期間(有期)で迅速な成果を求められる雇用形態」ということでもあります。
・特定のプロジェクトに集中できる
特定のプロジェクトや業務に集中する環境が整っているケースが多く、明確な目標設定、専門性の発揮、フレキシブルな働き方、学習と成長の機会が与えられるケースもあります。
→デメリット
懸念点として雇用契約が一定期間で終了した後の契約更新の不確実性が挙げられます。また契約が終了した場合、一定期間のキャリアの中断が発生します。そして契約期間や就業形態によっては福利厚生が限られる場合もあるため雇用契約締結前によく確認をしておく必要があります。
派遣労働者とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結んだ上で、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くという雇用形態です。
→メリット
・短期間で多様な経験(スキル)を積むことができる
さまざまな業界や職種を経験でき自分自身の適性を発見する手助けとなります。また短期プロジェクトや異なる業務に関わることで、幅広いスキルを習得できます。これにより、将来的なキャリア選択の幅が広がり自己成長が可能です。
・適応能力やコミュニケーション能力が培われる
さまざまな企業文化や働き方に触れることで、自己の適応能力やコミュニケーション能力が向上します。
・人脈を広げられる
多様な職場で働くことにより、広範なネットワークを築くことができます。この人脈は、今後のキャリアにおいて新たなチャンスや情報を得るために役立つ可能性があります。
・プライベートの時間を確保しやすい
必要なときに一時的に仕事を離れたり、次の契約までの期間を空けたりできます
・(派遣先によっては)フレキシブルな働き方が可能
勤務時間の選択肢があるケース、プロジェクト単位で仕事内容が選択可能なケースがあります。
→デメリット
派遣社員は正社員に比べて職場でのサポートが制限されることがある(飽くまで派遣元と派遣先の契約業務範囲内での就業となる)のでこの点を慎重に考慮する必要があります。また就業先によっては昇給や昇進の機会が少ないケースもあります。
フリーランスとは注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるので、注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできない雇用形態です。
→メリット
・就業時間の柔軟性:
フリーランスは、分の働く時間を自由に設定できるため、生活リズムに合わせた働き方が可能です。朝型や夜型など、自分の最も生産的な時間帯に働くことができます。
・就業場所の選択が可能
職種によってはオフィスに縛られず自宅、カフェ、コワーキングスペースなど、多様な場所での作業が可能です。
・プロジェクトを選択できる
自分が興味や関心を持つプロジェクトを選ぶことができ、より自分に合った仕事をする機会が増えます。これにより、仕事に対する満足感ややりがいを感じやすくなります。
・自分のライフスタイルを中心にした就業が可能
仕事とプライベートのバランスを調整できるため、家庭や趣味、旅行など、個人のライフスタイルに合わせた働き方を実現できます。これにより心身の健康を保ちやすくなります。
→デメリット
就業時間や就業場所、スケジュール管理に自由度が高い分、決められた時間内で予定通りの成果を上げる必要があり自己管理能力が必要となります。また自分の能力やスキルが直接的に報酬に反映されるため継続的な自己研鑽と、能力が十分に発揮できる仕事を見極め受注する力(営業力)、他にも健康管理能力が必要となります。また安定した収入とはなりにくいためライフステージに合わせてダブルワークやトリプルワークを考える必要があります。
パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が正社員と比べて短い労働者をいいます。「パートタイマー」や「アルバイト」など、呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法上のパートタイム労働者となります。
→メリット
・柔軟な働き方が可能
就業時間や就業日数の設定が柔軟にできる可能性が高く、家庭や学業、趣味、介護などの他の活動との両立が比較的しやすい雇用形態です。
・新しいスキルの習得が可能
仕事に取られる時間を抑えることもできるため、他の仕事や活動を並行して行いやすく新しいスキルや経験を得る機会が持てます。
・就業開始の一歩を踏み出しやすい:
様々な業務の求人がありまた就業時間もさまざまでであるため、フルタイムでの勤務が難しい状況でもまずは短時間からの就業を開始できるチャンスがあります。
→デメリット
フルタイムの労働者に比べて収入が少ないことが一般的です。また就業条件によっては福利厚生(健康保険や年金など)が正社員に比べて限定的となります。
再就職を目指す皆さんには、まずは以下の下準備を行っておくことをお勧めします。
3-1.希望の働き方を考える
就業時間、週の就業日数、必要な手取り額、加入したい保険、扶養への加入・離脱など、自分の希望する就業条件を洗い出しておきましょう。
3-2.自己分析を行う
自身のスキル、経験、価値観を見つめ直し、自らの強みや好みを明確にしましょう。これにより、自らに最適な雇用形態や職種を見極めることができます。
3-3.情報収集をする
自分が応募を希望する業界の情報を積極的に収集しましょう。求人情報や企業のHPなどをリサーチし、自分に合った職場環境を見つける助けとします。
3-4.ネットワークを広げておく
友人や同業種・異業種の知人と繋がりを持ち続けることで、潜在的な求人情報やサポートを得られる可能性があります。人脈を広げておくことは、再就職活動において有益です。
3-5.自己研鑽に努める
必要な資格やスキルを磨くための自己投資を行いましょう。オンラインコースやセミナーに参加したり資格を取得することで競争力を高めることができます。
3-6.柔軟な思考を持つ
再就職活動は思い通りに進まないこともありますが、常にポジティブで真摯な姿勢を保ち、必要に応じて柔軟に戦略や希望条件を変更していきましょう。
3-7.自信を持つ
過去の経験やスキルが自分にとっての強みであることを自覚し、応募書類や面接で自分をしっかりアピールする姿勢を大切にしましょう。
では最後に自分に適した雇用形態を選ぶためのポイント5点を挙げます。
4-1.ライフスタイルを考える
家族の状況や趣味、健康状態、現在のライフステージなど、今の自分の生活スタイルに合った働き方を選びましょう。
4-2.キャリアプランを明確にする
将来的にどのようなキャリアを築きたいのかを考えそれに向けた道筋を描きましょう。正社員としてのキャリアアップを目指すのか、フリーランスとしての独立を狙うのか、自分の目標に合わせた雇用形態を選んでいきましょう。
4-3.経済的な安定を考慮する
自分の現在の経済状況や月々に必要な金額、将来的に必要な収入額を見つめ直し、どういった雇用形態でどのように就業していくかを考えましょう。
4-4.仕事の内容に注目する
自分が遣り甲斐を持って働ける分野やスキルを活かせる仕事は何なのかを確認し、雇用形態選択の一助としましょう。
4-5.学びと成長の機会を考える
自分の専門スキルを磨き続け成長していくための機会が得られる雇用形態を選ぶことも重要です。
いかがでしたか?
以上の準備やポイントを踏まえ、皆さんがご自分のライフプランに合った雇用形態と職場を見つけ充実した職業人生を歩むための第一歩が踏み出せるよう願っております。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
この記事の著者:吉田友子
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